画像:BIEN
以下、Universal Basic Income, an opportunity for rural Chile | BIEN — Basic Income Earth Network という記事の翻訳です。
チリ農村部とベーシックインカム
ガブリエラ・カバナ
2021年1月17日 意見記事
チリ農村部とベーシックインカム
チリでは、この数十年間で、都市部と農村部の分断が、静かに、しかし急速に深刻化しています。
豊かで尊厳のある生活の場としての農村部を取り戻すという課題は、あまりにも長い間放置されてきました。
農業改革の時代以来、チリの農村部では、輸出志向型の農業や産業を志向する国に従って、農産物を生産し、エネルギー生産を行い、都市部のゴミを受け入れてきましたが、農村部の住民には何の決定権も与えられていませんでした。
理解すべきは、農村部には、今の時代の大きな課題を解決できる力が秘められていることです。
農村部の住民は、土地の生物多様性に注意を払い、有害な採掘プロジェクトから生態系を守り、食糧主権にかかわるプロジェクト開発に専念することが可能です。
しかし、これらの課題に取り組むには、農村部住民の経済的安定が、最低限保障されていることが必要です。
農村部住民の経済的安定が保障されていれば、たとえば、チリ南岸で行われているサケ養殖と同じくらい有害なアグリビジネスや、有害産業への依存を断ち切ることができます。
有害産業は、収入を得る手段のなかった人々を惑わせ、不安定かつ危険な仕事に従事させるようになりました。
ベーシックインカムは、農村部住民の社会的地位を向上させ、他の生活上の課題を達成させるための、第一歩となる可能性があります。
積みあがった債務残高と、改革プロジェクトの緊急性について認識できたなら、農村部の割合が高い州あるいは地域に優先的にベーシックインカムを導入することが、現実的だといえるでしょう。
そうすれば、どん底に落ちている地域経済を活性化する上で、ベーシックインカムがどのような効果を発揮するのかについての早期評価が可能となります。
都市部に移住した人たちも、現金を受け取れるならば、先祖伝来の土地に戻ってきやすくなるはずです。
農村部の住民には、自分たちの生活を、何か意味のあるものにしたいという願望、可能性、そして手段があります。
彼らには、小規模かつエコロジカルなアグロツーリズム、環境を害さない放牧、農業輸出モデルに適合しないために失われた穀物・果物・野菜の栽培を取り戻し、農村部を繁栄・発展させていける可能性があります。
それは、食文化の伝統を受け継ぎ、豊かにすることにつながります。
耕作可能地を増やすために、急速に進んでいる森林破壊も、植林を増やすことでで阻止できるでしょう。
チリ国内の社会的生態学的基盤は、人々が日々の収入(低賃金であることが多い)を得ることと引き換えに弱体化しています。この悪循環は、ベーシックインカムによって断ち切ることが可能です。
我々人間種の出現以来、社会は、最も深刻な生態学的変化の時代に突入しています。社会にとっても、回復力のある地域を有していることが必要なはずです。
危機に瀕している農村部住民にベーシックインカムが支給されるならば、干ばつと砂漠化は改善されてくことでしょう。
都市を維持するという視点から考えると、チリに無条件ベーシックインカム(UBI)を導入することの潜在的効果は明白です。
できるだけ早く、ベーシックインカムを実施すべきです。