住民発議による住民投票 & 無条件ベーシックインカム

CHダグラス『社会信用論』翻訳者・上岡みおが世界の賢人に学んだことをつづるブログ

アフリカ ベーシックインカム社会実験 GiveDirectly

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Give Directly  Joe Huston氏

 

2017年ベーシックインカム世界大会の取材記事、再掲します!

 

ブ・ダイレクトリー(GiveDirectly)

アメリカのギブ・ダイレクトリー(GiveDirectly)という団体は、集めた寄付金を元手として、アフリカ最貧国の人々に現金支援し、生活や精神状態がどのように変わったかを追跡調査するという活動を開始しました。

現地政府や行政にゆだねた支援は、その多くが搾取され、本当に困っている人に届かないという話も聞きますが、GiveDirectlyは、ベーシックインカム導入実験への参加者が受け取れるような仕組み(携帯電話の活用など)を採用しています。

集めた寄付金は149万ドル。なんと200億円弱です。

その9割が現金支援、1割が活動費にあてられているそうです。8万世帯が参加する、世界最大規模のベーシックインカム導入実験です。

 


規模&長期にわたる社会実験

ギブ・ダイレクトリーは、ケニア・ウガンダを中心に、

・月額22ドル程のお金を受け取るグループ

・比較的まとまったお金を1-3回受け取るグループ

・比較対象として無支給のグループ

の3グループを調査対象とし、現金を受け取った人々の生活や精神状態がどのように変化したかを調査する予定です。

 金  額    村       成人   期間
$0.75/1日   40-50      6,000   12年
$0.75/1日    80    10,000   2年
上限$500      80    10,000    1-3回
 無支給     100      12,500  比較対象 

そして、次のような調査結果が得られているそうです。

収     入         34%増加
資     産         58%増加
子供の栄養失調         42%減少
酒・タバコ・犯罪         増減なし


金支給によって勤労意欲が下がることはない

福祉手当ての受給者が怠け者になるとの指摘は多方面から寄せられます。

失業保険や生活保護など、受給条件が厳しく、様々な制約が課される制度下では、そうなるかもしれませんが、使い道に制限のない「現金支給」した場合には、勤労意欲は下がらないことが明確になってきています。

ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学の研究者が、世界中からランダムに集めた調査結果からも、現金支援を受けても勤労意欲は下がらないという結論が導き出されています。

ハーバード大学とMITの研究者の論文
Debunking the stereotype of the lazy welfare recipient Evidence from cash transfer programme worldwide

 

 

金支給されても酒・タバコの消費は増えない

ベーシックインカム否定論者の中には、現金支給すると酒・タバコの消費が増えるのではないかと懸念する人もいますが、様々な調査結果から、現金支援を受けた人がお酒に溺れたりしないことも判明しつつあります。

Cash transfers and temptation goods という世界銀行が発表した論文には、次のように書かれています。

 

現金支援が教育・健康を改善し、貧困を緩和することは実証されている。ラテンアメリカ、アフリカ、アジアにおける11の実験調査結果を精査しなおしたところ、現金支援が酒やタバコの消費に向かうのではないかという心配も無用であることがわかった。

 

ギブ・ダイレクトリーの追跡調査によっても、現金支援を受けた人々が、それをお酒やタバコの消費に向けたりはしなかったことが分かっています。

 


金支援を受けた人々の生の声

ギブ・ダイレクトリーの GDLive というページには、現金支援を受けた人たちの声が次々と掲載されていっています。

ある人は貯金、ある人は借金の返済、ある人は教育に、ある人は生活必需品、あるいは家畜、あるいは種苗の購入など、各人が必要とするものを購入していることがわかります。

その人が置かれている状況やニーズにあわせてお金を使えるため、前向きに生きることができるようになり、収入や財産が増えていくようです。

 


る女性の生活の変化

ケニアに住む28歳の既婚女性、ジョセフィンさんの場合、ある程度まとまったお金を3回ほど受け取りました。

8ヶ月前  第1回目の現金支援 $97
・ 生活必需品~食べ物やマットレスを購入

5ヶ月前 第2回目の現金支援 $483
・滞納していた授業料を払えたので卒業資格がもらえた
・不足していた結婚持参金の補填ができたので 対等な夫婦になれたように感じた

1ヶ月前 第3回目の現金支援 $465
・ 学校の卒業資格がとれたのでマーケティングの仕事に就けた
・ 夫が自動車整備工の資格取得のため学校に通い始めた

ジョセフィンさんの話は、ほんの一例です。

GDLiveのページには、読みきれないくらいほど、現金支援を受けたひとたちの
お金の使い道、生活の変化、ココロの変化などが報告されています。


ってほしい広めてほしい

現金支援を受けると人間は怠惰になる、という心配はしなくていいことは、すでにハッキリと証明されています。

GiveDirectlyの活動調査報告も、世界銀行のレポートも、もっと広く、社会的に認知されていってほしいです。