ほとんどの人には十分な「購買力」がないうえに、わずかな「購買力」も、税金を徴収されることで、さらに弱められています。
消費者に購買力がないので、モノを作っても売れません。モノを作っても売れないから、困窮者が増えます。
働いても働いても貧しくなる一方です。
作っても売っても働いてもビンボーになる理由
なせ、消費者に購買力がないのかを、コーヒーを例に考えてみましょう。
1杯330円のコーヒーのうち人件費は110円と言われています。
なので、自分の給料では、自分が売ってるコーヒーを買えません。
「何言ってるの? 私はカフェで働いて、月に15万円稼いでるわ。働いているお店で売ってるコーヒーくらい買えるわよ。」
という声が聞こえてきそうです。
自分目線では確かにそうなのですが・・・。
マクロで考えてみよう
自分の給料では、自分が売ってるものを買えないという話は、自分目線ではなく、マクロ目線でとらえないと、理解することができません。
カフェの例でいくと、従業員や雇用主の月給総額が、お店の月間売上金額を超過することはありえません。そんなことになったら、お店はつぶれてしまいますよね?
自分の給料では、自分が売ってるものの「一部」は買えても、「全部」は買えないわけです。
このことは、すべての商品に当てはまります。
建物、飛行機、車、列車、道路、橋、家具、洋服、家電、雑貨、食べ物、etc
「モノやサービスの販売価格」は、それらを作るために支払われた「人件費」よりも高いので、労働収入によっては、世の中で売られている商品の「一部」しか買えません。
そのため、モノを買うために借金しなくてはならなくなります。お金を貸して利息を受け取った人はより金持ちに、お金を借りて利息を支払った人はより貧乏になります。当たり前の道理です。
さらには、資本主義経済下では、モノを作り、売る努力をしなければなりません。しかし、社会全体として購買力が不足しているのですから、利益を出せるひとは限られます。
その結果、世の中の人は、勝ち組と負け組にわかれていきます。
勝ち組は「努力や才能」をもてはやされ、負け組は「努力と才能がたりなかった」と思いこまされ、困窮していきます。
賃金労働あるいは起業によって自立的に暮らすことを前提条件とする、資本主義社会では、作っても売っても働いてもビンボーになる人が増え続けることになります。
GDP・民間給与所得・歳出
実際の数字をみてみましょう。
平成30年(2018年)、名目GDP(国民総生産)は548兆円(内閣府発表)、民間所得の合計は223兆円(国税庁発表)、国の歳出(一般会計と特別会計の合計)は239兆円でした。(財務省発表)
日本国民の給与所得の合計金額 223兆円
作り出したモノとサービスの合計額(GDP) 548兆円
国家運営にかかる費用(歳出) 239兆円
作り出した富の合計(GDP)548兆円に対して、労働賃金(民間給与)の合計は223兆円。労働によっては、作ったものの一部しか買えません。
恐ろしいのは、一般会計と特別会計の合計が239兆円に達する国の歳出です。民間部門の給料全額を差し出しても、歳出を賄えないのです。
そもそものところで、労働によっては、富(モノとサービス)を分配できないのですから、所得税や消費税をによって財政をまかなうこともまた、不可能です。
◆日本のGDP
◆民間給与所得の合計
◆国の歳出合計
官民ともに借金まみれ
働いて得たお金だけでは、モノやサービスを買えないし、国の歳出もまかなえないのですから、借金するしかありません。
実際の数字をみてみましょう。下記は内閣府の資料です。国民の金融資産は減る一方なのに、負債は増えています。
国民の金融資産
平成 6年(1994年) 3500兆円
平成28年(2016年) 3002兆円
国民の負債
平成 6年(1994年) 4929兆円
平成28年(2016年) 7146兆円
現行システムを続けていく限り、国民の負債総額は増えるばかりとなるでしょう。
それは国も同様です。
財務省は2022年8月、国債と借入金、政府短期証券を合計したいわゆる「国の借金」が2022年6月末時点で1255兆1932億円だったと発表しました。
(日本経済新聞)
普通国債残高は、2022年度末には1026兆円に上ると見込まれています。
また、財政の持続可能性を見る上では、税収を生み出す元となる国の経済規模(GDP)に対して、総額でどのぐらいの借金をしているかが重要です。日本の債務残高はGDPの2倍を超えており、主要先進国の中で最も高い水準にあります。
(財務省)
貧富格差の拡大
資本主義という、負け組を発生させるシステムは、株式市場、中央銀行制度、貿易、税金制度などと複雑に絡み合い、負け組の割合を増やし続け、貧富の差を拡大させていきます。
すでに、上位8人の大富豪の資産が下位36億人の資産相当になるまで、貧富の差は広がっています。(2017年1月情報)
これから先、貧富の差は広がり続けるばかりとなるでしょう。
相対的貧困から絶対的貧困へ
相対的貧困とは、ある国や地域社会の平均的な生活水準と比較して、所得が著しく低い状態です。
これに対して、栄養不良、文盲、疾病、悪環境、高い幼児死亡率、低い平均寿命などに示される、人間らしい生活からはほど遠い状態が、絶対的貧困です。
金融広報中央委員会による2019年調査によると、2人以上の世帯の4世帯に1世帯、単身世帯の4割近くが貯蓄がゼロという結果だったそうです。日本国内の話です。
「貯蓄ゼロ」でも収入があれば何とかなりますが、収入が途絶えたときは、一夜にして絶対的貧困に転落します。
今私たちは、絶対的貧困に転落する人が大量発生する時代の真っただ中にいます。
資本主義経済の宿命として、年を追うごとに困窮する人が増えていき、相対的貧困に苦しむ人が増えていたところに、新型コロナウイルス(COVID19)という災厄が発生したからです。
コロナ危機によって、営業自粛&ステイホームせざるをえなくなり、収入の道を断たれた人が続出しています。
貯蓄ゼロの世帯にとって、収入が途絶えることは、命にかかわる緊急事態です。
2020年5月8日の琉球新報には、食料買えない人が26%にのぼるという、悲惨な実態が報告されています。
コロナ経済危機は、リーマンショックよりも酷いことになると予想されています。これからのことを考えると、暗い暗い暗い気持ちになってきます。
こんな世の中、もうイヤです。
作っても売っても働いてもビンボーになる社会から、誰もが自分らしく豊かに生きていける社会にしていきたいものです。
そういう社会にするための具体策は、こちらに書きました。
「政府貨幣による無条件ベーシックインカム」