住民発議による住民投票 & 無条件ベーシックインカム

CHダグラス『社会信用論』翻訳者・上岡みおが世界の賢人に学んだことをつづるブログ

米軍基地を撤退させた事例

米軍基地を撤退させた事例

 

 

目次

 

 

米軍基地 ワールド地図

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画像:OVERSEAS BASE REALIGNMENT AND CLOSURE COALITION

 

OVERSEAS BASE REALIGNMENT AND CLOSURE COALITION によると、アメリカは、80以上の国々に750の軍事基地を展開しており、海外に駐留する軍事基地の75-85% を占めているそうです。

英国は145基地、ロシアは 12-36基地 中国は8基地及びチベットであるとされています。

 

 

米軍基地は撤退させられるのか?

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米軍基地を撤退させたフィリピン

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・1991年9月、フィリピンの上院は、アメリカの軍事基地は植民地主義の名残りであり、フィリピンの主権を侵害していると決定。  

・1990年の夏に、あと10年間、海軍基地でのリース期間を2億300万ドルの年間援助で延長すると暫定合意していた条約を拒否。
1992年末までにスービック湾の海軍基地から撤退するよう通告。  

・1898年以来設置されていた米軍基地を撤退させた。 

 

画像: Philippine Sailor, The U. S. Naval Base Subic Bay in 1981 

 

 

 

 

米軍基地を撤退させたエクアドル

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・1999年 南米のエクアドル政府と米国が締結した基地貸与協定に基づいてマンタ米軍基地が設置される

・2006年 基地撤去を求める世論を受けて、対米従属からの脱却を掲げるコレア大統領が当選

・2008年4月 憲法改正 「エクアドルは平和の地である」「外国の軍事基地または軍事目的の外国の施設の存在は禁止する」

Foreign bases banned in new constitution – The Denver Post

 

・2008年7月 コレア政権、基地貸与協定を更新しないと米国に正式通告

20089月 国民投票 外国軍基地の設置を禁止する新憲法が承認される

The Complete Withdrawal of the US Military from Ecuador: A Victory for Sovereignty and Peace in Latin America—— | The Asia-Pacific Journal: Japan Focus

 

ラファエル・コレア氏 2007-17年 エクアドル大統領

RAFAEL VICENTE CORREA DELGADO

画像:RAFAEL VICENTE CORREA DELGADO

 

 

 

米軍基地を撤退させたイタリア~マッダレーナ島

 

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・冷戦時代、議会を通さず、アメリカとイタリアの役人との密約によって、サルデーニャ州マッダレーナ島に米軍基地が設置された。

 

・2004年、米軍基地撤退を問う国民発議がなされたが、イタリア国会は、国民投票を実施させず、イタリア政府は国防や外交政策の問題に関与することはできないと主張した。

 

・イタリア政府が恐れていたのは、国策に反対する国民発議が活発化することだった。


・世論の強い反対に押される形で、2005年、マッダレーナ島の米軍基地は閉鎖すると発表され、2008年には撤退が完了。35年間の米軍基地の歴史が終了。

 

Greenpeace - US Navy Base in La Maddalena

画像:1991年 US Navy Base in La Maddalena GreenPeace撮影

 

 

画像:Zoom Italia 24 srl 





米軍基地を撤退させたプエルトリコ~ビエケス島

 

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プエルトリコ・ビエケス島は、米軍基地に苦しめられ続けていました。

約15,000人の米兵は、空き時間には、酒と女を求めて徘徊しました。女性は家から引きずり出され、輪姦されました。輪姦によって殺された少年もいました。

Military Law Task Force of the National Lawyers Guild 

 

・1999年、米軍基地の警備員が誤爆により死亡した事件によって基地反対運動が頂点に達する

・国内外の著名人が反対運動に加わることで国際的世論が盛り上がる

    ケネディJr
      リッキー・マーティン
      ノーベル賞作家
   スポーツ界のスーパースター

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・2001年住民投票

①即時、永久的な演習中止と演習場の浄化・返還 ➢ 68%

②模擬弾使用と二〇〇三年五月一日までの演習終結、演習場の返還 ➢ 30%

③実弾による演習継続 ➢1.7%

有権者約5900人の80.5%が投票し、圧倒的多数で「即時、永久的な演習中止と演習場の浄化・返還」という意思が示された。

 

・2001年ブッシュ大統領が爆撃訓練中止を表明。2003年には海軍が撤退

 

【ビエケス島住民投票 “演習即時中止”選んだ島民 影響は沖縄・全世界に】



悔しいことに、米軍基地が撤退した後も、ビエケス島は、深刻な後遺症に悩まされています。

 

米海軍の駐留と、彼らがうみ出した環境災害は、ビエケスの人々を苦しめ続けています。何千もの爆弾、手榴弾、ナパーム弾、枯葉剤、劣化ウラン、その他の爆発物が残されたままなのです。

しかも、米国政府は毒物や爆弾を適切に処理していません。米国は、不発弾をまとめて島内で爆破処理することで、汚染物質をさらに拡散させています。

2003年、アメリカ海軍は、占領地を、プエルトリコではなく、合衆国魚類野生生物局に譲渡しました。合衆国魚類野生生物局は、軍事活動に使用されたことのないビーチを運営しています。

ビエケスの人々は、米国政府がプエルトリコの土地を管理し続けることが、将来の島の再軍事化につながるのではないかと恐れています。

土地がビエケスの住民に返還されなかったこと、日没後に散歩したり、伝統食のカニを採取したりすると罰金を科せられることに不満を抱いています。

エリアには2つの軍事施設、ROTHRレーダーシステムと通信施設が残っています。人々はこれらの軍事施設も閉鎖されることを望んでいます。

 

Military Law Task Force of the National Lawyers Guild 

2013年10月2日

 

 

 

 

画像: CBC, What happens when a hurricane hits a toxic waste site?

 

FILE - In this April 17, 2008 file photo, an unexploded ordinance is blown up in a controlled demolition at the former Vieques Naval Training Range, on Vieques island, Puerto Rico. An extensive cleanup of Vieques is underway and the Navy says it's close to finishing work on a former munitions disposal site on the island. It would be a milestone for the cleanup but the plan has sparked criticism. (AP Photo/Brennan Linsley, File)

画像:The San Diego Union-Tribune 2008年、かつての軍事訓練場で不発弾を爆破させた様子 島民にとっては大迷惑な不発弾処理方法

 

 

まとめ

 

米軍基地を撤退させた事例をみると、大きく2つのパターンにわかれます

1 フィリピンやエクアドルなど、国家の主権や世論を重んじる議会や大統領が主導するパターン

2 イタリアでは国民発議、プエルトリコでは住民投票、住民発議や住民投票という制度を利用することで、米軍を撤退させるパターン

有権者・政治家ともに「国家主権を重んじる」「民意を尊重する」という民主主義スピリットがある国、住民投票という主権在民を実現させるための制度とその結果を尊重する国では、実際に米軍基地を撤退させているのです。

日本の住民投票制度には

①法定署名を集めても、議会が住民投票を許可しない場合がある

②投票結果に法的拘束力がない

③国民投票のレベルでは国民発議権がない

などの欠陥があります。

「主権在民」を実現させるためには、こうした制度欠陥を是正していくことが必要です。


なお、30年前のドイツと日本では、住民投票制度の欠陥度合が似たりよったりでした。

しかし、ドイツの人たちは、住民投票制度を改善していくことが、すべての社会問題を解決に向かわせる機動力になることを自覚し、少しずつ是正していきました。

今、ドイツの住民投票制度は、素晴らしいものになっていますが、日本の住民投票制度は30年前のままです。

 

色々な社会問題を解決していくために、最優先されるべき課題は、民主主義「制度」の欠陥を見直して、改善していくことなのです。