上岡みおによる、グローバル・パスポートの翻訳(16ページ目)。
画像引用:Global Passport to Modern Direct Democracy | International IDEA
住民発議権とは
イニシアチブとも称される住民発議権の初期の形態は、すべての臣民が、皇帝宛に提案や苦情を伝えることができた、帝政時代の中国の陳情書です。
しかしながら、陳情書に法的拘束力はなく、単なる嘆願の域を出ないものでした。
住民による新法制定の手段として、署名集めによる住民発議という方法が初めて憲法に記されたのは、フランス革命後の18世紀末のことです。
現在では、住民発議権が頻繁に発動されているのは、スイス連邦やアメリカ合衆国などの連邦国家です。
スイスは、1891年の憲法改正によって、住民発議権を国内に導入しました。
それから2017年中頃までに、住民発議によって国政レベルの住民投票にかけられた議案のうち、200以上が可決されました。(スイス連邦 事務局2017)
20世紀初頭、アメリカ合衆国では、州政府や地方自治体が続々と住民発議制度を採用していきました(1898年にサウスダコタ州が導入したケースがアメリカ初)が、国家レベルでは、未だ導入されていません。
新しいデモクラシーの概念は、同時期のヨーロッパを席巻し、憲法の条文に住民発議権を取り入れる国も増えていきました。
ところが、独裁政権が台頭し、大戦も勃発したため、デモクラシー的な権利は、数十年もの間放棄され続けてしまいました。
デモクラシーが再び浮上してくるのは1989年以降のことです。
近年では、ヨーロッパはもちろん、ラテンアメリカやアジアを含む多くの国々で、様々な形式、手法、可能性が試されるようになってきています。
住民発議権は、アルゼンチン、カナダ、ドイツ、メキシコといった連邦国において、急速に導入されつつあります。(Altman 2011)