The Chicago Plan Revisited, IMF Working Paper,
The Model under the Chicago Plan, Banks
シカゴプラン/銀行業務モデル
シカゴプランの骨子は、銀行は、預金額(dt)の100%を、政府発行の貨幣 (mt) によって裏付けなければならないところにあります。
dt=mt
銀行は、新しい預金を作成して貸し出すことができません。銀行の貸出債権は、自らの株式資本と非金融負債 (ft) の組み合わせによって形成されることになります。
セクションII.Bで説明した理由により、非金融負債 (ft) は、政府(財務省)によって独占的に供給されていると想定しています。
民間企業は、銀行株式または貸付金の原資とならない金融商品のいずれかを保有することだけが許されます。
したがって、 (ft) は財務省の与信枠ともいえるでしょう。
この資金調達スキームの下では、政府は、「与信枠」と「マネーサプライ」の総量を、それぞれ管理することになります。
新しい貸借対照表への移行は、概念上、1回の移行につき2つの段階を踏んで行われます。
第一段階では、銀行は、財務省から借り入れることにより、預金の準備金を0%から100%へと増やします。ft = mt = dt となります。
第二段階では、政府は単独で、政府貨幣(mt)と、財務省の与信枠(ft)を管理します。
銀行は、貸借対照表上のすべての政府債務を、銀行へ付与された財務省の与信枠と相殺します。財務省与信枠の残りは、銀行ローンの返済口座を介して、制約のある世帯と製造業者に送金します。こうして、第二段階では、投資ローン(ℓk) のみが残ります
投資ローン(ℓk)だけが未処理、政府貨幣(mt)は変わらず、財務省の与信枠(ft)は大きく減少しています。
前期の純利息は債務者に引きつがれます。これにより、銀行全体の貸借対照表は、
ℓk + mt = ft + dt + nb
になります。
銀行システムによる与信機能は、次のように簡素化されたうえで付与されます。
ℓk = ft + nb
政府は、財務省与信枠の金利を制御することを通して、貸付金額に影響を及ぼします。自己資本規制による貸付金額にも影響を与える可能性があります。
しかし、こうした規制を厳しくしない限り、銀行には、与信枠を設定する権能も、与信枠をどこに割り当てるかを決定する自由も残されます。
したがって、シカゴプランの金銭的取り決めによって、最も生産的な分野への資本配分を促進する、民間の金融部門の職能が阻害されることはありません。
銀行部門にとっての重大な変更箇所は以下の通りです。
まず、政府は、準備金に名目金利を設定します。ここで想定しているのは、銀行の預金機能は完全競争であることと、銀行が預金サービスを提供する際の限界費用はゼロであることです。
これは、銀行が imt を預金者に1対1で渡すことを意味します。
imt = idt
したがって、政策は、政府が直接 idt を設定するという観点から説明されます。
現在、民間部門への貸出が設備投資資金にのみ拡張されていることを考えると、貸付金の損失/利益の総額は、Λb = Λk に単純化されます。
自己資本規制は、貸借対照表の与信枠に課されることになりますが、それ以外は現行のままです。詳細は「技術的付録」に記載されています。
銀行の与信枠を最適化する条件は変わりませんが、スプレッド(調達金利と運用金利の差/利益)は、預金金利(idt)と貸出金利 (iℓt)との差益ではなく、政府が設定した金利(ift)と貸出金利(iℓt)との差益となります。