上岡みおによる、グローバル・パスポートの翻訳(13ページ目)。
画像引用:Global Passport to Modern Direct Democracy | International IDEA
利用すべき制度を見極めよう
自分の意見を政治に反映させる制度としてのダイレクト・デモクラシー、参加型デモクラシーには、住民発議権、為政者が発動させる一般投票、あるいは参加型(協議型)の方法など、いくつかの制度があります。
■ 住民発議権
住民発議権とは、政治的には少数派の住民であっても、法律改正を伴う政治的議案を提案できる権利のことです。
この権利を行使するためには、自分が居住する地域の法律について理解しておく必要があります。
市町村、県、州、国、国際組織など、どの政治階層において住民発議権を発動させるべきかを見極めねばならないからです。
提案できる議題の種類が制限されている場合もあれば、何かしらのルールが規定されている場合もあります。
- 住民発議権は、次の2つに分類されます。
① 住民発議権:住民が提案した議題を住民投票にかけて、すべての有権者にその是非を問うことができるのが住民発議権です。住民投票には、投票結果に法的拘束力があるものと、ないものとがあります。為政者から対抗案が出される場合もあります。
② 議題発議権:住民が提案した議題は、住民投票にかけられることはなく、議会など為政者によってのみ検討されるに留まります。「住民発議権」に比較すると、「課題発議権」は非常に限定的です。
この他に、住民の側から政治的提案をする方法としては、陳情、住民による請願、住民運動などが挙げられます。
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上岡みおによる補足:
「グローバル・パスポート」いよいよ 住 民 発 議 権 の説明に突入してきました!
ここはぜひ、スイスでベーシックインカム導入の是非を国民投票にかけた立役者のおひとりエノ・シュミットさんのお話をシェアさせていただきたいと思います。
民主主義のリーダーたちとの奇跡のショット:シュミットさん 上岡みお カウフマンご夫妻
■エノ・シュミット氏のお話
スイスでは、誰でも住民発議権を行使できる。
そこでボクたちは、ベーシックインカムを国民発議することにしたんだ。
始めたときは、5人しかいなかった。社会に貢献できるアイデアがあるわけだからまずは議案にしてみようよって。
それを元にして 考えをまとめていったんだ。文章はこれでいいかなとか。
ヨーロッパ人の権利や人権に反してないかとか、そのあたりさえ押さえておけばあとは好きにしていいんだ。
スイスでは、ある議案を国民投票にかけるためには、18ヶ月以内に その議案に賛同する署名を10万筆集めなくてはならない。
ネット署名は認められていないから街かどに立って説明して署名してもらわなくちゃならない。
「このアイデアに賛同してくれますか?」
「国民投票にかけたいと思いますか?」これが 民主主義なんだよ。
フツーの市民からアイデアが出てきて国民全員で議論していく、新しい決まりや新しい役割について考え、それを憲法に反映させる努力をすること。それ自体が民主主義なんだ。
シュミットさんたちが主導したベーシックインカム国民投票によって「無条件ベーシックインカム」というアイデアが世界的に認知されていきました。
日本では「スイスでは否決された」「負けた」と否定的に報道されることが多いのですが、たった5人の人たちが、直接民主制度を通してベーシックインカムについての世界的認知を広げ、世界的議論を促していったことは、「負け」でしょうか。
私には、まぶしいほどの成功例にしか見えません。