住民発議による住民投票 & 無条件ベーシックインカム

CHダグラス『社会信用論』翻訳者・上岡みおが世界の賢人に学んだことをつづるブログ

辺野古県民投票~県民投票は熟議の好機

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今井一さんの講演会主催者は20歳の琉大生、鍵田修平さん。左側の方です。

上岡みおは、鍵田さんが「論壇」へ投稿された文章を読んで、涙が出るほど感動しました。

鍵田さんが主張されていることが、過去30年間で1000件以上の住民投票にかかわってきた、住民投票の世界的識者ブルーノ・カウフマンさんがおっしゃっていることと、同じだったからです。それはつまり、

「民主主義とは熟議すること」
幸いにも鍵田さんの許可を得られたので、「論壇」に投稿された文章をシェアさせていただきます。(見出しは上岡みおによるもの)

講演会では、今井さんのお話が素晴らしかった(抱腹絶倒のお話ばかり)のはもちろんですが、こんなふうに考える若い方に出会えたことも、とても嬉しい出来事でした。 

 

民投票は熟議の好機
~民主主義へ一歩踏み出そう

賛成・反対では割り切れない基地問題 

私と同世代の多くが、基地問題を話すとき、意見の前置きに「基地のことよく知らないから」という言葉を使います。私は大学進学のために沖縄に移住し、2年半がたちました。

9月に行われた県知事選挙の時に、友人は「辺野古基地問題は生まれたときから今まで続いている。ずっと政治家が議論してきたのに、基地の知識もなく、沖縄戦や復帰運動も経験していない自分が基地について話せない」と口にしていました。

彼の意見は沖縄で育った同世代が持つ共通の悩みに思えます。基地に対して賛成・反対では割り切れない気持ちと向き合って考えることのつらさを感じました。

来年2月24日、辺野古米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票が行われます。

私は当初県民投票には懐疑的でした。県民の複雑な気持ちに2択を迫ることは、困難であると考えたからです。

 

そもそも住民投票とは

そこで私は、住民投票について勉強することにしました。まず、住民投票は日本各所で1800件以上行われていたことに驚きました。

テーマはそれぞれに違うけれども地域の重要な問題は議会任せにせず、自分たちで決めたいという意識が住民投票という形になって合意形成の手段として活用されてきたのです。

その中には2択を迫られた住民投票であっても、住民が案件に関する情報を十分に得た上で、賛否を超えた議論が行われた場合、結果にかかわらず「住民投票をやってよかった」と答える人が多いことを知りました。

 

県民投票は熟議の好機

県民投票に協力しない、選択肢を増やした方がいいということではなく、今回の県民投票でも熟議を行うことが大切ではないでしょうか。

全国で行われてきた住民投票を取材するジャーナリスト今井一氏は著書のなかで、住民投票は「住民が政治の”観客”であることをやめ、民主政治のグラウンドに足を踏み入れることだ」と表現しています。

辺野古米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問われた私はまさに観客からグラウンドに立てるチャンスを得たのです。

熟議の伴う県民投票への一歩として、まずはこのチャンスをどう捉えるべきか考えませんか?

 

民投票アレルギー

沖縄県内外の識者の中には、「県民投票」に反対する人も多いです。

沖縄の新聞紙上には、下記のような意見が飛び交っています。

住民投票に逃げるな
住民投票の効果は小さくリスクは大きい
・2つの住民投票は首長に裏切られた
・「多数決」は民主主義ではない
・県民投票では現状は変わらない

1996年の日米地位協定の見直しを求めた沖縄県民投票、1997年の辺野古基地建設の是非を問うた名護市民投票ともに、投票結果は踏みにじられました。住民投票をしても意味がないという意見は根強いようです。
住民投票に懐疑的にならざるを得ない理由には、 

① 投票結果に拘束力がない

② 少数派の意見は無視される

ことが考えられます。


票結果に拘束力がない

「投票結果に拘束力がない」ことについては制度改正が急務です。

欧州評議会ヴェニス委員会から出されている勧告は、「投票結果に拘束力のない住民投票は、民主主義を深めるという見地からは、理想的な方法とはいえない。」というものです。

欧州評議会は、人権、民主主義、法の支配の分野で国際社会の基準策定を主導する汎欧州の国際機関として、1949年フランスに設立された権威ある国際団体です。日本はオブザーバー国のひとつです。

現在、スイスと台湾は、投票結果に拘束力がある住民投票制度を整えています。ゆえに、この2か国は、民主主義国として評価されています。

対して、不備欠陥だらけの住民投票制度に甘んじている日本は「民主主義国」という基準においては「三流国」扱いされる事態になっています。

1996年・1997年の住民投票の結果が踏みにじられた時点で、マスコミや学識者から
「投票結果に拘束力をもたせるよう制度改正すべき」
「制度改正することが政治的課題」
という意見が出なかったことも不思議です。

主権者の立場から「投票結果に拘束力をもたせよう」という声をあげるべきときにきているのかもしれません。


数派の意見は無視される

少数派の意見が通らないのは民主主義の欠陥のひとつです。この欠陥は、どのように是正すればよいのでしょうか。

今井さんは、このたびの辺野古県民投票に際して「公開討論の場を設けるべき」と提案なさっていました。

賛成派と反対派が一同に会して討論を繰り返すことによって、それぞれの意見の長所と短所が浮き彫りになっていくのだそうです。

公開討論を通して、当初は少数派だった意見が支持されていくようになった様子を目の当たりにしてこられた今井さんならではのご提案です。

 

とめ 

住民投票は、主権者が政治に直接参加する主権行使の機会。
・地域の問題を解決するには、賛成派と反対派が公開討論をすることが必要。
・話し合いを通じて合意形成をしていくことが民主主義。
・投票結果に拘束力のある住民投票制度に改正していくことが政治課題。

 

 


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